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デイヴィッド・ヒル著『僕らの事情。』

デイヴィッド・ヒル著『僕らの事情。』を田中亜希子さんの訳で読み終わりました。

不治の病、筋ジストロフィーと闘う15歳の少年サイモンにとって一番仲のいい友人である、ネイサンを主人公にしたニュージーランドのお話です。

恐らく初めてニュージーランドの小説を読みましたが、ニュージーランド文学も悪くないですね。

常日ごろ口の悪い冗談ばかり言って、明るく気丈に振舞っているサイモンは、他の子と何ひとつ変わらないその辺にいる普通の男の子です。

ただ一つ、筋ジストロフィーということを除いては・・・。

しかし、それは果てしも無く大きな違いでもあります。

この物語は、ネイサンの視点で書かれてますが、同じテーマがサイモンの手記という形で書かれた場合には、全然違った印象のストーリーになったことでしょう。

読み終えて、サイモンのクラスメイトは、きっと、人を殺したり、自殺に追い込む程の悪質なイジメをしたりしないんだろうなぁ、と思いました。

障害を抱える子とそうでない子が共に同じ学校で学ぶための努力が、もっと積極的になされてもいいのではないでしょうか。

障害を持つ側にとっては社会で自立するために、また、障害を持たない側にとっては「心の教育」のために、まさに今の世の中に必要なことだと思います。

むしろ、そうしたことに真剣に取組むことは、教師にとっても「心の教育」になるかもしれません。

障害の種類や重さにもよりますが、せめて障害を抱える側が希望した場合には、そうした機会が与えられる仕組みが用意されていてもらいたいです。

教育現場の苦労など何も知らない私だから言える理想論なのかもしれませんが・・・。

さて、この本の中で心に残ったシーンを、幾つか挙げておきます。

●急速に悪くなったサイモンについて話す、ネイサンネイサンの母との会話より

ネイサン 「だけど、罪悪感を覚えるのと同時に、喜んでもいる。 ぼくは大丈夫でよかった、悪いところが何もなくてよかったって。」

 「それでいいのよ。 だれだって喜ぶどころか、うれしくてたまらなくなるはずよ。 だってそのとき、この世界が急に、なんだかすばらしくて、きらきら輝いていて、すてきなことでいっぱいに思えてくるんだから」

さらに「そうでしょう? 人は喜びと悲しみを同時に感じることができるの。」

●テレビのチャリティ番組『テレソン』について語るサイモンの言葉より

「『テレソン』はどんなことをしてる? おれたちをまるでよそ者みたいに扱ってるじゃねえか。 猫なで声を出しながら、こっちを『よそ者だ』って気分にさせるんだ。 『おれたちはなんてかわいそうなんだ。 けど、そのうちなんとかなるさ』って気分にさせる。 だけどなんとかなることなんてない。 おれたちはみんなと同じ世界がほしいんだ」

ネイサンの気持ちより

サイモンを見ると、自分がラッキーだと思うと同時に罪悪感を覚えて、他人にもっと親切にしたくなる。 しんせつ。 こういうときにこの四文字を使うのはなんだかいやな感じがする。」

●最後に、サイモンが国語の授業で書いた詩です。

 まぶしい夏の日、ぼくはここにいる。

 外には、きらめき輝く世界。

 中には、車椅子に座るぼく。

 日の光を浴びる葉を見て、遠くで笑う声に耳をかたむける。

 むこうには、少年たち。

 泳いで、波に乗って、女の子たちに笑いかける。

 ここには、車椅子に座るぼく。

 本を読んで、古い昼下がりの映画を見て、

 部屋から部屋へ移動する。

 友達が静けさを壊して、輝く世界からここにやってくる。

 そのとき、ぼくの一部も壊れてしまう。

僕らの事情。 Book 僕らの事情。

著者:デイヴィッド ヒル
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コメント

さざまるさん、こんばんは。とてもいい本ですね。ネイサンの気持ちがよくわかります。病気の人に親切にするのは、どこか偽善の気持ちと優越感の複雑な思いで息苦しくなるときがあります。少年は正直ですね。

投稿: レイア | 2006年11月10日 (金) 00時16分

レイアさん、こんばんは。
私も、自分よりもっと大変そうな方のブログを見て、あそこまで酷くなくて良かったという気持ちがかすめる時があります。
そんなとき、励ましのコメントを打つはずの手が止まってしまいます。
人間って、何ともややこしい生き物ですね。

投稿: さざまる | 2006年11月10日 (金) 01時15分

さざまるさん、こんにちは。人間ってややこしいですね。本当に。ただ、私の娘はカトリックの学校に通っていたので3才から障害者と自然に触れ合っていました。慈愛の気持ちというより当たり前に助けたり同等にけんかもしていました。バリアは子供たちにはありませんでした。バリアフリーの教育は大事ですよね。ちなみに学園長はイタリアの神父でした。日本はまだまだですね。

投稿: レイア | 2006年11月10日 (金) 16時28分

レイアさん、こんにちは。
学校での受け入れがすぐには無理だとしても、健常児と障害児がもっと自然に遊べる環境があってもいいかもしれませんね。

投稿: さざまる | 2006年11月10日 (金) 17時43分

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『僕らの事情。』著 者:デイヴィッド・ヒル 田中亜希子 訳出版社:求龍堂発行月 [続きを読む]

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